00部屋その四
□指先
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私の大事なフラッグを仕上げる指先。整備する指。私の頬を、愛おしげに撫でていく指。
それらは全て、ただひとつの手に連なる指だ。
私の愛しい、愛しい指先。
「どうしたんだい?」
掴んだ指を無言で見つめていると、いつものようにカタギリの優しい声がする。彼の手が、指が、私の指を握り締める。
器用な指だ。握り返しながら、思う。
カタギリは微笑み、私の髪へと頬に添えていた指を滑らせた。
なんて優しいのだろう。
「君の指は魔法の指だな」
「おや、どうしてかな?」
指に口付ける。人差し指、中指、薬指。黄色人種独特の肌の色。カタギリは目を細めて、ただ、それを眺めている。
そして、もう一方の手で、私の唇をゆっくりと撫でた。
「君の指は、私の感情を創り出していく」
「ガンダムが、じゃなく?」
「君だよ。ガンダムと戦えるのだって、君の力があるからなのだからな」
指を離して、カタギリの体へと腕を回した。肩に顎を乗せ、力を込めると、カタギリも私の背へと腕を回す。
それから、意地悪に微笑んだ。
「好きなのは、僕の指だけかい?」
「まさか」
黒い目を見つめる。楽しそうな感情が見え隠れしていて、それは私を楽しませ喜ばす。カタギリの指が、私の首筋を撫で上げて行った。
私は、耳元で囁くようにして答える。
「君の全てを、だ」
だからそんな、指に嫉妬なんてしないでくれ。
私は君を、君という存在の全てを、どうしようもなく愛しているのだから。勿論、指に対する感情は少しまた違うものでもあるのだが。
「カタギリ、愛している」
「知ってるよ」
頬を滑った指が、優しく、口付けを促した。