00部屋その四

□夢でいいから
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 家族を失って、兄を失って、恋人を失って、オレは、
 ーーオレは、最近兄の夢を見る。


 それはきまって五年前から四年前にかけての夢。ソレスタルビーイングが表舞台で活動し始めた頃の夢。刹那とティエリアの仲が険悪で、アレルヤが思い悩んでいた頃の夢。
 夢。
 夢の中では、兄はいつもみんなの面倒見役だった。ひとりで突っ走る刹那にブレーキをかけ、不機嫌なティエリアをあやし、不安定なアレルヤにそれとなく気を遣い。今とは全然違うガンダムマイスターの姿が、そこにはあった。
 だけど兄さんは、兄さんは、ほとんど昔と変わっていなくて。テロへの怒り、戦っているときの真剣な表情、それ以外はまるっきり昔の兄さんのまま、明るくてみんなの兄貴分の兄さんのままで。
 馬鹿みたいに泣きたくなった。
 本当は、本当は。その愛を受けるべきはオレだった。たったひとり生き残った弟のオレだった。兄さんはオレを愛してくれていた。だから自分独りで危ない橋を渡り、オレだけは光の中を歩ませてくれた。でも当時、オレはその愛を鬱陶しいとすら思っていたのだ。兄さんはあんなにオレを愛してくれたのに。
 でもいつからかきっと、兄さんは仲間たちに愛情の対象を見いだしたのだろう。そして、オレに向けていた愛情を、そっちへ向けたのだろう。
 それなのに、兄さんは死んでしまった。
 オレでもなく、仲間たちでもなく、家族の仇を討つために。
 兄さん。伝えられなかったけど、本当は大好きだった兄さん。自慢の兄だった兄さん。
 なあ、
 もう一度、夢でいいから、オレだけを愛してくれよ。







なんかライルがサーシェス討つまでの心の流れがいまいち分からなかったので、捏造。

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