00部屋その壱
□愛妻弁当はいかが?
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「グリムジョー君!」
四時間目終了後。
てとてとと駆けて来た織姫に声をかけられて、睡眠から覚醒したばかりのグリムジョーは「何だよ」と答えた。
「どうかしたか?」
「ううん、あのね……一緒にお弁当食べようと思って!」
そう言って邪気のない笑顔を見せる織姫は、一応グリムジョーの彼女である。恋人同士が一緒に食事をするのは普通のこと。グリムジョーはさして考えずに返事した。
「屋上でも行くか」
「うん!」
「パン買ってから行くから先に行ってろ」
鞄の中から財布だけ取り出して、グリムジョーは立ち上がる。すると、「ううん」と織姫がもじもじしながら言った。
「パンを買う必要、ないよ」
「ハァ? 何でだよ」
「あのね……私、グリムジョー君の分も持ってきたの」
突然の織姫の告白に、グリムジョーがげほげほとむせる。それから、信じられない、と言いたげな顔をした。
「……マジかよ」
「うん。食パンとあんこ」
「……相変わらずだな」
人にあげる分も自分と同じセンスにする織姫に、グリムジョーは苦笑を隠せない。だが、それもまあいいかと思い、織姫の手を引いて歩き出した。
「じゃあ行くか、屋上」
「え……うん!」
突然のグリムジョーの行動に目を白黒させていた織姫は、頬を赤く染めて頷く。
「一緒にお弁当って、なんか良いね」
「そうか?」
「うん、楽しいよ」
絡んだ指の密度は、あんこよりも甘かった。
少女漫画!笑