00部屋その壱

□雨の日のデート
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※現パロ



 雨が降った。
 お気に入りのパンプスは、爪先がびしょびしょになってしまった。舌打ち。待ち合わせ場所はすぐそこだから、それまでの辛抱だけど。それでも、お気に入りの服が濡れてしまうのはつらい。もっと大きい傘を買えばいいのかもしれないけど、そうするとデザイン性が格段に落ちてしまう。
(18歳になったら免許取れって、言おうっと)
 家まで迎えに来てくれる男性。それがチルッチの理想像だ。白馬の王子様。皮肉屋な性格に似合わず、チルッチは乙女な面を持ち合わせている。
 待ち合わせ場所が近付くと、いつも通りの格好で彼女を待つ青年の姿が目に付いた。
「相変わらず、だっさいのね」
 挨拶代わりにそう声をかけると、苦笑しながら彼は顔を上げる。
「悪かったね、服がないんだよ」
「今度選んであげるわよ?」
「遠慮しとくよ」
「あたしが選びたいのよ。一緒に歩く男の格好が、気にならないわけがないじゃない」
 今日のチルッチの服装。梅雨に合わせた紫陽花色のワンピース。綺麗なグラデーションのそれは、高級ブランドでも何でもない。目の前の、この男が作り上げたのだ。チルッチ衝動買いしてしまった布を、彼は美しいワンピースに仕立て上げた。
「そのネックレス、可愛いね」
 言い慣れていないはずの褒め言葉をさらっと口にしてしまう雨竜は、おそらく、言葉がもたらす意味を理解していないのだろう。
「それはどうも。ワンピースに合わせて買ったのよ」
「パンプス、濡れるよ」
「分かってるわよ」
「とりあえず、喫茶店にでも入ろうか。これ以上濡れると困る」
 すぐそこの喫茶店を指差して、雨竜が言う。奢らせよう、とチルッチは思った。雨竜は最初は渋るけど、最後は結局チルッチに奢ってくれる。紳士な男なのである。
「ほら、行こう」
 言いながら、雨竜がこちらに手を差し出してくる。びっくりして、チルッチはその手を見つめた。
「何だい?」
「あんたの手、濡れるわよ」
「はぐれるよりはいいじゃないか」
 手を繋ぐ、という行為の意味すら、分からないように。初心なのか、演技なのか。チルッチには判別不可能だ。
 ただ、誤魔化しきれないのは、傘に隠した彼女の頬の赤らみ。
「馬鹿!」
 そう言って、チルッチは彼の手をギュっと握った。
 美しい服を生み出す手は、優しくて、繊細だった。










雨竜×チルッチもありだと思うんですよ!

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