00部屋その壱

□偉大なる恋心
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「ねえお父さん、どうして!?」
 私には、信じられなかった。
「どうして、シャムは出て行っちゃったの!?」
 シャムは、私の兄だ。私にはたくさんの兄弟がいる。そのほとんどが養子で、私と血はつながっていない。けれど、シャーネとシャムは別だ。二人と私はちゃんと血がつながっている。同じ、お父さんの血を受け継いでいるのだ。
「納得がいきませんか、リーザ」
「いかない!」
 その中でも、シャムは私に特に優しくしてくれた。お父さんが仕事で忙しい時には、髪をとかしてくれたり、くくってくれたりした。シャーネやアデル、シックルは洋服に無頓着だから、シャムに買い物について来てもらったこともある。シャムは、私だけの優しいお兄ちゃん。――の、はずだった。
「なんなの、あのグラハム・スペクターって!」
 私からシャムを奪って行った男の名前は、グラハム・スペクター。シャムの大学の先輩だ。シャムは色々とあって、外では「シャフト」という名前を名乗っている。その名前で入学した大学で、シャムはその男に会ったのだ。それから何があったのか、私は知らない。でも、気付いた時には――
『しばらく、グラハムさんのところで世話になるから。……いや、俺が世話をするって言った方が正しいか』
 そう言って、シャムは家出してしまったのだ。
 そういうわけで、シャムは現在、グラハムという男の家にいる。その男の家から大学には通っているそうだ。
「取り返しに言っちゃ駄目?」
 首を傾げてお父さん尋ねると、お父さんは笑いながら私の頭を撫でた。
「駄目ですよ、リーザ」
「どうして?」
「シャムがそれを選んだからです」
 そう、みんなお父さんと同じ意見だった。一年前にクリスが出て行ってしまってから、慣れたのかもしれない。最近は、アデルも家を空けることが多い。どうしてなのかはみんな知っているみたいだけど、私には教えてくれない。
「分かんないよ、お父さん。なんでシャムが出て行っちゃったのか」
 お父さんのスーツにしがみついて言うと、「リーザ」とお父さんが優しく微笑んだ。
「いつか、貴女にも分かる時が来ますよ」
「……そうなの?」
「だから、シャムのことはそっとしておいてあげましょう」




 夢を見た。シャムがいなくなってしまった日の夢だ。
 あれからもう、五年が経った。あのときまだ9歳だった私も、もう今は14歳。中学生として、家の近所の中学校に通っている。
「遅れるわよ! 急いで、レイル!」
「言われなくても急いでるよ! ほら、フランクも早く!」
 レイルとフランク、それから私。3人で走って、学校へと向かう。遅刻しそうなのは、決して私のせいじゃない。フランクがだらだらとご飯を食べるからだ。
「まったく、フランクはいつも……!」
 言いながら、角を曲がったところで。
 私はどんっと人にぶつかった。
「いたっ」
「リーザ!?」
 びっくりしたレイルの声。驚いたのは私の方だ。尻餅をついたまま、ついてない、とため息をついていると、「悪い」と頭上から声がした。
「大丈夫か? 立てるか?」
 顔を上げると、そこにいたのは高校生くらいの男の人。近くの高校の制服を着ている。
 その顔を見ると同時、私の胸がどくんと音を立てた。
「――あ」
「え?」
 分かってしまった。
 これが、シャムが家出してしまった理由。
 これが、恋だ。







100000打リクエストで「現代、ラフォレット家から家でしたシャムに怒るリーザ、両思いなシャフグラ」でした!
最後は何故かフィ←リザが混ざってしまいました。レイルとフランクはおまけです(笑)
特殊な設定で、めちゃくちゃ楽しんで書きました! リクエスト有難う御座います!

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