00部屋その壱

□僕のお姫様
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「で、今回はどうするんや、ローズ」
「うーん、大体のイメージはできてるんだけどね……」
 ローズはリサを飾り付けるのが好きだ。
 いや、その言い方では語弊があるだろう。ローズはリサのことが好きだ。中身も、外見も、全て。とりわけその美しい顔立ちや体を、彼は芸術品に対するかのように愛している。だから、そんな彼女をもっと美しく飾り立てることが、ローズは好きなのだ。
「じゃ、まずはこの服だね」
 そう言って彼がリサに渡したのは、薄い水色のキャミソールワンピース。胸元と裾にレースが付いたそれは、裾がふわりと広がっていてなかなかに可愛らしい。
「またこんなんかい」
 やや少女趣味なそれにため息をつきながら、リサは彼を部屋から追い出した。そして、何の躊躇いもなく服を脱いで、試着。ブラの紐をどうするか悩んでいたら、ワンピースの下に白いボレロがあるのに気が付いた。気が利きすぎて嫌になる、と思いながら、リサはそれを上に羽織る。
「着替えたで」
 そうリサが声をかけると、ほどなくローズが別の物を手に部屋に現れた。
「……今日は巻くんか」
 リサに訊かれて、「そうだよ」とローズはヘアアイロンのコードをコンセントに差し込む。
「リサのまっすぐな髪も好きだけど、偶には良いんじゃないかな」
「勝手にし」
 椅子に座ったリサが、ほれ、とローズを上目に見る。苦笑しながら、ローズはリサの髪を一房手に取った。
「じゃあ、好きにさせてもらうよ」
 ローズがリサの髪を扱う手つきは、優しい。そして繊細だ。それは彼という人間のすべてに共通している。彼は優しく、繊細だ。特に、自分が大事にするものたちに対しては。
「なんや変な感じやな」
「そうかい? 似合うよ」
 ゆっくりとリサの髪を縦巻きにしたローズは、満足そうに身を離す。緩やかに巻かれたそれが、リサには別人のもののように見えた。
「……で?」
「あとはメイクだね」
 すちゃっとメイクボックスを取り出したローズが、楽しそうに数個の化粧道具を取り出す。まずは乳液。肌を撫でる優しい手つきに、リサの唇も笑みを象る。
「くすぐったいわ」
 ファンデーションに薄めのアイシャドウ、眉や睫毛はもともと整っているので手を加えずに。唇には、薄いピンクの口紅を。
「……できたよ」
 鏡の中のリサを覗き込んだローズは、そう言って満足気に笑った。
「うん、やっぱり似合う」
「それはどーも」
「じゃあ行こうか、お姫様」
「あんた、ほんま気障やな」
 差し出された手を取ったリサが、ふわりとスカートを膨らませて歩き始める。そして、何もしなくともローズは王子のようだと、そう、彼女は思った。







ローズがリサをドレスアップする話が書きたかっただけ!

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