00部屋その壱

□掌
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 晁蓋の掌が僕の頬を包む。大きくて、ゴツゴツしていて、武人らしい掌。それとは裏腹な優しい手つきに、しばしの間、僕は酔う。

「呉用」
「どうしたの? 晁蓋」
「……いや、」

 晁蓋の掌は大きい。僕の小さな顔なんて、両方の手があれば覆い尽くせてしまうかもしれない。今も、節くれだった指が、僕の目を覆うようにしている。視界を奪われても、作り出される闇は明るかった。
 壊れ物にでも触れるような、繊細な手つき。
 普段のだらしなさからは考えられないほどに、触れあうときの晁蓋は優しい。

「お前の顔、小せぇよな」
「晁蓋の手が大きいんだよ」

 指先で耳から顎にかけてのラインをなぞって、悪戯に人差し指が唇へと触れる。すう、とゆっくり撫ぜられると、何故だか少しくすぐったかった。晁蓋の太い首に腕を伸ばして、ぎゅ、としがみ付く。
 晁蓋は優しい。
 そして僕らは、こうして時々甘え合う。

「今日はいやに積極的だな」
「晁蓋はやけに優しい。いつもこの半分でも優しくしてくれたら良いのにね」
「それだけお前が好きなんだよ」
「……本当に、君は」

 反論しようとすると、封じ込めるように口付け。気付けば掌は僕の背に回っていて、しっかりと包み込まれていた。
 髪紐が解かれて、はらりと髪が流れ落ちる。

「愛してんぜ、呉用」

 晁蓋はずるい。

「……僕もだよ、なんて言わないからね」
「言ってるも同然じゃねぇか」
「言ったから言う、なんていうのは嫌いなんだよ。もっとちゃんと僕から言いたい」

 髪をもてあそぶ手が止まる。鼻先に口付けて見せると、晁蓋は笑った。

「折角だから口にしろよ」

 それから、再度唇が重なる。今度はさっきみたいに甘ったるいものじゃなく、もっと濃くて、ありのままの唇で。

「良いよな?」

 甘さを含んだままの瞳に、仄かな欲情が見え隠れする。

「……優しく、だよ」

 顔中が熱いのを感じながら、僕は頬へと戻った掌に接吻した。








(リクエスト物!)
(基本的にバカップルな晁呉)
(阿呆みたいにいちゃいちゃしてれば良いなーと思います)

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