00部屋その壱

□甘楽ちゃんシリーズ
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※九十甘です







「かんら、」
 俺が名を口にすれば、あいつは決まって眉を寄せる。
「うざいです」
「そう言うなよ」
 その表情が可愛くて、俺は密かに微笑んだ。
 甘楽は、人間を愛してる。人間が好きだ。絶世の美貌に薄っぺらい笑顔を浮かべてそう叫ぶ甘楽は、現実離れしていて、嘘臭い生き物だと思う。
 それが、俺と平和島静雄を前にしたときだけ、甘楽は笑わなくなる。
 あの、いつもの仮面みたいな甘ったるい笑顔と、砂糖漬けのスミレのような声をやめて、ありのままの感情や表情を曝け出してくるのだ。これが可愛い以外の何になる?
「ツンデレだな」
「九十九屋とシズちゃん以外にはツンしませんけどねー」
 んべえ、と舌を出し、スカートから覗く脚を組む甘楽。白い脚。魅惑的な曲線。いつもは武器のように使うそれを、俺の前では何の意識もせず見せつけてくる。まったく、本当に、可愛い生き物だ。
「なるほど、本命にはツンってわけか」
「あれ、九十九屋って目も頭も悪いんですかあ? 甘楽ちゃん心配過ぎて死にそうですから、いいお医者さん紹介してあげますよ?」
「ツンだな」
 そう言って頬に手を当てれば、赤く染まる頬。それでもこちらを睨みつけてくるんだから、素直じゃない。そこがまた、いいわけだが。
「かんら」
 耳元で名を呼んでやると、細い肩が震えた。
「……何ですか」
「かわいいなあ、お前」
「!」
 危険を察知したのか、甘楽が身を引いて逃げようとする。許さず、俺は壁に手を突いた。
「逃がすわけないだろ」
 尖った顎に指を当て、くいっと顔を上げさせる。視界に移り込んだのは、真っ赤な頬と、僅かな期待に染まった赤い目。
やっぱり素直じゃない。
 唇に親指で触れ、それから軽く口付けた。こつん、と甘楽の後頭部が壁に触れたことを確認してから、だらんと伸びた手を俺の手で包む。指を絡めればぎゅっと握り返して来て、密かにほくそ笑んだ。
「俺のことが、好きなくせに」
 心中でそう呟いて、ゆっくりと唇を離す。
「……九十九屋なんて、死んじゃえば良いんですよっ」
「死んだら寂しいクセに」
「ふん、私は人類を愛してるから、九十九屋が死んだぐらいじゃ泣きもしませんよーだ」
 そんなことを言いながらも指を絡めて離さない甘楽に、俺はもう一度キスをすることを決めた。
 ああ、やっぱり、かわいい。






九十臨より先に九十甘を書いたよ!^q^という話。
甘楽ちゃんは九十九屋にはツンデレだったらかわいいと思います。ていうかもうツンデレで良いよ……。
九十甘の九十九屋は、変態、です(断言)
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