00部屋その壱

□同志同士
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「それ、貰って良いか?」

 算盤を弾きながら胡麻団子を食べていた蔣敬に劉唐がそう声をかけると、帳簿からちらりと顔を上げた彼は、「どうぞ」と首を縦に振った。
 持参していた湯呑みを手に、その隣の椅子へと腰掛ける劉唐。
 何気なく帳簿を覗き込んだ彼は、そこに書かれている数の桁数に、思わず「げっ」と声を上げた。
 蔣敬が、苦笑しながら言う。

「それ、全部戴宋君の分なんです」
「あの餓鬼……」
「まあ、武器が武器ですから、しようがないですけどね」

 やんわりと戴宋をフォローしながら、小さな手の平が、パチンと算盤を弾く。弾の上には、ところどころ胡麻が落ちていた。
 目にも留まらぬ速さで動く指を目で追いながら、劉唐は頬杖を突く。

「お前、大変だよな……」
「そうですか?」
「俺だったら絶対無理だ」
「人にはそれぞれ、向き不向きがありますからね」

 パチン
 計算を終えたのか、蔣敬の手が算盤から離れた。
 そのまま胡麻団子を摘まんだ彼は、ぽい、と一つを口の中に放り込み、咀嚼して飲み込んでから続ける。

「要は、適材適所、ですよ」
 色の白い肌の中、餡が付いた唇は、ぽってりと赤い。
 女子供のような青年だな、と劉唐は不意に思った。何も彼を見下してそう思ったのではない。ただ、純粋に、そう思った。

「戦えないけど、計算が出来る。誇れるほどではないですが、頭も回る方です。……だからこそ、出来ることがある。戦うだけじゃ、駄目ですから」

 誰かがこういうことをしなくちゃいけないんです。
 繊細な睫毛を上下させながら、彼は言った。

「少しでも、志のための力になりたい。こんなことしかできなくても、力になれるんです」
「こんなことって……スゲェことだろ」
「そう言って、もらえますか?」

 首を曲げて、劉唐のことをじっと見る蔣敬。
 その頭に手を伸ばした劉唐は、わしわしと、その頭を乱暴に撫でた。

「当たり前だろ、テメェはもっと自分を評価しろ」
「わ、やめてくださいよ」

 慌ててその手からすり抜け、蔣敬はくすくすと笑う。
 劉唐も口元に笑みを浮かべ、長い脚を組んだ。

「全員が、お前のやってることは知ってる。だからもっと胸張ってろ」
「……そう、ですね」
「あと、ついでにあの糞餓鬼に『もっと大人しく戦え』くらい言っとけ。放っといたら調子乗るぞ」
「劉唐さんだって……。いえ、でも、僕は良いんです」
「お前はそんなんだから……」

 言いかけた劉唐の言葉を遮り、蔣敬は言う。

「お金のことなんて気にしてちゃ、世の中は変えられませんよ。僕たちは、このお金を他人から奪ったわけじゃない。そのためのお金なんですから、使われて当然なんです」
「……よく分からん」
「ですから、」

 少し間をおいて、彼は微笑んだ。

「劉唐さんも、気にせずに戦ってくださいね」

 その言葉の意味することに気付いた劉唐は、瞬きをやめて蔣敬の顔を見る。

「思う存分、戴宋君にも負けないくらい、暴れてください」

 相手の顔の中に悪戯っ子のような表情を見つけた劉唐は、呼応するようにニッと笑い、「オウ」と応えてみせた。

「任せとけ」










(二人とも分からなすぎて捏造万歳状態です)
(ちょっとBL臭い二人)

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