00部屋その壱

□ニルハム過去ログ
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 隣で車を運転する彼の、整った横顔を見つめる。
 長い睫、大きくて澄んだ緑色の目。肌は白くて顔は童顔、到底軍人だとは思えない。身長だって、実際よりも大分小さく見られるはずだ。

「悪ぃな、折角のオフに」
「構わないさ、誘ったのは私だ」

 この車はグラハムの私物だ。
 会いに行こうと思って歩いていたところ目の前に車が停まり、何かと思えば運転席から顔を出したのは他でもないグラハムで。流れで乗せてもらうことになったのだが、果たして構わなかったのか。

「で、何処に買い物に行くんだ?」
「……服を買おうとは思っているのだが、まだそこまでは決めていない。何しろ、私服でいるより軍服でいる時間のほうが長いぐらいだ」
「へぇ。……香水、使ってくれてんだな」
「折角君から貰ったものだ、使わないのはもったいないだろう?」
「そりゃどうも」

 一緒に酒を飲み、買い物に付き合う。ここまでは普通の友人の範囲だろう。たまにしか会えないから、会えたときは他のことはすべてキャンセルになる。
 ところが、行くたびに食事を作ってやっているとなると変わってくる気がする。外食続きだと体に悪いという気遣いがあってのことだが、それにしても毎回となると、本当にこれは友人なのかとたまに不安になる。
 だが、この程度はまだマシだ。

 先日彼にプレゼントしてしまった、香水。
 アレルヤと共に地上で買い物していた時に見つけたのだが、何故かグラハム以外の顔が浮かんでこず、ついには買ってプレゼントしてしまったという複雑な物だ。
 流石のグラハムも困惑するかと思いきや、意外と素直に喜ばれてしまった。
 そして何と、偶然つけてくれているという。

(これは流石に、普通の友人の範囲じゃ明らかにないだろ)

 自分自身たまに不安になるのだが、グラハムはそんなに気にしていないらしい。どころか、そんなにおかしなことではないとすら思っているかもしれない。

(……もしかしたら、同じようなことをしてるヤツが他にもいたりしてな)

 勘が良いのか悪いのか、よく分らない男だ。こちらの正体には薄々感づいているような気がするのに、目の前の人間が自分ことをどう思っているか、それすら気付かないとは。
 鈍感、というか、何というか。

「あぁ、今更のようだが、服を買わなくても構わない気がしてきた」
「……なんだよ、それ」
「服が欲しいとは思ったのだが、買っても着ないなら変わらない。……いや、確か新作が出ていた気も……」
「なら買えば良いだろ?何なら俺が買ってやっても良いぜ」
「それは遠慮する。自分で買おう」

 本当に気付いていないのか、それともフリなのか。
 買ってやろうという言葉を拒否はしたが、俺がそう言い出すのを分かっていたようにも取れる。

(……考え過ぎか)

 目下の悩みは、目の前で子供のように悩む美人に、どうやって自分の気持ちを気付かせるかということ。

「なぁグラハム、赤い薔薇の花束のプレゼントと共に告白されたとして、お前はどうする?」
「どうする、とは、また唐突だな」
「良いから答えろよ」
「そうだな……随分と情熱的だ。それが違和感のない相手なら、一瞬で落ちてしまうかもしれないな」
「……へぇ」
「どうした?好きな女性でもいるのか?」
「……いや、」

 次に花屋の前を通ったら、赤い薔薇の花束でも買って、隣に座る彼にプレゼントしてみようか。

 愛の言葉とともに。

(……結構本気で考えてる俺、かなり重症だよな)






―アトガキ―

 ドライブの話にしようかな、というのと、赤い薔薇の花束を書きたくて書きました(うわ)
 コーラが赤い薔薇を持ってはいたけど、多分00で一番赤い薔薇が似合う男はグラハムだと思います。また違和感ないんですよね、グラハム……。
 ベタベタだけど、グラハムってそういうのに弱そうです(笑)乙女ですし。
 うちのロックオンってば、すっかりグラハムに振り回されてるなぁ……。
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