00部屋その壱
□奈落
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蜂蜜色の髪が広がるのにも構わず、腕を抑えてのしかかる。
荒ぶる感情を抑え込んで口付けると、もともと大きな目が更に大きく開かれた。
「どうした? 君にしては珍しく、余裕がないようだが」
「そうみたいだ」
見透かすようなグリーン合図が俺を捕らえて笑う。それだけでくらくらとするんだ、俺はかなりやられてしまっているのだろう。
「焦っているのか?」
しなやかな腕が首に回る。引き寄せられるように、もう一度キスをした。
「かもな」
目の前の体を俺という存在で埋め尽くしてしまいたい。
これは独占欲? それとも生物としての本能だろうか。どちらにせよ、性質が悪い。
こちらの方は、それを相手に許さないのだから。
「ニール」
綺麗な色をしているだろう爪が首筋に立てられる。もっとこうしていたかったのだが、機嫌を損ねたのかもしれない。体を離して窺うと、飛び込んで来たのは艶然とした微笑みだった。
爪が離れ、指が後ろ髪をかきあげる。
「時々、君はとても若い」
「あんただって、まだ若いだろ」
「青い、と表現しても良いかもしれない」
「悪かったな、餓鬼で」
「いや、それが心地良いのだよ」
「それが?」
「君に求められていると感じる」
微笑みの中に束の間見えたまっすぐな色に、俺は息を止めた。
「ニール」
甘い声が俺の名を呼ぶ。
「どうしたい?」
まるで呪文だ。その言葉に操られるように、俺は息を吐きだした。
「……あんたが欲しい」
「あげようとも」
「あんたを、俺で埋め尽くしたい」
「君が望むなら」
甘い味が唇を掠め取る。
「私も君が欲しい。君だけを感じていたい」
その甘い微笑みに、俺たちはもう戻れないのだと今更悟った。
(久々にニルハム!^^)
(まだ私の中で終わったわけじゃないんですアピール!笑)