00その弐

□ギブミーラブ!
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「おたくさあ、もうちょい小さくなれよ」

 何を言い出すかと思えば、突然義賊がそんなことを言い出した。

「……何を言っているんですか、一体」

 確かに、私は背が高い方だ。しかし、王進様には遠く及ばないし、なかなか筋肉が付かない体質なため、身長がある方が助かる。
 第一に、縮めなどと言われて小さくなれるはずがない。

「無理に決まっているでしょう」

 当然のこととしてそう切り返せば、「じゃあ」と義賊は言葉を続けた。

「俺より年下になれよ」
「……意味が分かりません」
「俺より一年か二年くらい後に生まれて来い。同い年は却下」

 この少年は何を言っているのだろう。会話に困ったとしても、他に言うことがあるだろうに。
 呆れ顔で見る私のことを、義賊が下から見上げてくる。

「……何が言いたいんですか」
「何って、」

 ため息をつくと、手が伸びてきて頬に触れた。視線がぶつかる。

「男のプライドに関わる話」

 意味が分からない。大体私だって男なのだが、この少年の頭にはそれが前提としてないのだろうか。
 いつも分からないことばかり言う少年だ。
 時にはからかうように、時には真面目な顔をして。いつもいつも、意味の分からないことばかりを言う。
 なのに、なんとなくそれに耳を傾けてしまう自分が、無性に悔しいのだ。

「じゃあ、これで許してやるよ」

 私が考えている間にも、そう言った義賊の手は私の後頭部に回り、無理矢理に顔を引き寄せる。
 視線と視線が絡み合って離れなくなり、鼻の頭同士がぶつかったところで、義賊は私の耳に囁いた。

「偶にはおたくからキスすること」
「な、」

 そういう、ことか。
 意味が分かると同時に、顔に熱が集まっていく。
 その様子を満足げに見た義賊は、ちゅ、と軽い音を立てて私の唇を奪うと、悪戯をする大人の男のような……ああ、何故伝わらないのだろう! とにかく、意地の悪い表情をして見せた。

「そうすりゃ、俺もすこしは格好が付く」

 ……やっぱり、この男より小さく生まれなくて良かったと思う。
 簡単な理由だ。










(もし私が見上げるようにこの男を見ていて、それでこんな風に笑われたら、恥ずかしくて死んでしまうではないですか!)










―後書き
 雪姫様からリクエストのあった、「戴林で、わがままな戴宋くんに振り回される林冲」でした。
 結局バカップルなオチという……。
 書き切ったところで、「あれ、これ無自覚林冲が振り回される話ってことじゃないの?」と気付きました。なんて今更。
 もし何か御不満があれば……いつでも砂月はお待ちしております……雪姫様。
 林冲が精神的にも受け身な戴林のリクエストはやはり多いですね。
 いちいち赤くなってる林冲がいれば可愛いなーと思います! と言って誤魔化します!
 それでは、雪姫様、本当にリクエスト有難う御座いました!
 雪姫様のみ、この小説はお持ち帰り可です!




 

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