00部屋その五
□彼が猫になった日
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戌井さんがいなくなった。
唐突に、煙のようにいなくなった。
誰に訊いても駄目だった。ユアちゃんですら、戌井さんの行方を知らないみたいだった。
だけど、私は探した。
戌井さんを、探した。
戌井さんが見つかった。
死体となって見つかった。
海に浮かんでいるところを、漁師さんが発見したらしい。
虹色の髪は水に溶けてもとの色を晒していて、コンタクトも流されていたけれど、それが戌井さんなのは間違いなかった。
死体を解剖した結果、戌井さんは重い病気を患っていたことが分かった。
重い病気。
それを知られないために、戌井さんはいなくなったらしい。
私は泣いた。
たくさん泣いた。
戌井さん。
そして、戌井さんは最期だけ、猫のようだったのだなあと思った。