萬小説

□熱帯魚は思考する。ACT2-3
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デュオの謹慎は一週間で解けた。
実際彼が何をしようとしたのか、知っているのはウーフェイとヒイロ、報告を受けたレディとサリィだけだ。
他の職員には、デュオは疲労困憊でテンパリ気味だから、強制休暇と伝わっている。
久しぶりに出勤した職場では、既にあの噂も落ち着いている。
皆の中で情報を確認する時期は終了し、既定の事実として収まったのだろう。
そして、実際にそれは事実になってしまったのだ。
お疲れの部長を労る部下達の優しい眼差しのなかで、デュオは嘆息した。
ヒイロもデュオも、外では今まで通りに接している。
ヒイロにしてみれば、デュオが自分を受け入れてくれた上に、それが既に周知されていて、何を焦る必要も無いと言ったところなのだろう。
そんな余裕こかれても、何だか少しシャクにさわるが、職場で馴れ馴れしくされるよりは良いと、デュオは思っていた。
ユーリもあんな目に遭っておきながら、普段通り有能に働いている。
ただ。
先程廊下ですれ違った時に、
「ヒイロさんに愛想が尽きたら何時でも来てくださいね。」
と、飛び切りの笑顔で言われた時には、今回こそはきちんと投げ飛ばしておいた。
「あんまり人をみくびんなよ、ユーリ君。10年はえぇっての。」
すっきりしたので、デュオの笑顔も百点できまった。
それが根強いデュオファンを萌え上がらせたのは、また別の話。
しかしてこの自宅謹慎を言い渡された一週間で、デュオは非常に拍子抜けしていた。
一人で気張って来たのが、中々に無駄だった様に感じて、切なさすら感じる。
充たされる事に、危機感すら。
慣れて無いからだと、自らに言い含める。
ヒイロがデュオを包み込んでしまおうとするから。
そんな愛情に慣れない自分の、何処とない息苦しさを、デュオは窘めて、宥めて、受け入れ様としていた。
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