萬小説

□熱帯魚は思考する。ACT2
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オーロラ姫から目覚めたヒイロの前には、二人のデュオがいた。
「俺の息子だよ。」
その言葉が嘘であると、ヒイロは直ぐに承知した。
それ程見事に、彼の記憶は復元されていた。



「デュオ。」
二人きりになりたがらない彼の隙をついて、ヒイロはデュオを自分に宛がわれたコンパートメントに引きこんだ。
歳を重ね老い、見上げる様になってしまったデュオは、それでもヒイロの大切な人だった。
「…何故俺を避ける?」
お前は俺の物なのに。
ヒイロは純粋に、そう問い掛けた。
「お前のデュオは、俺じゃない。」
初老の男、ファーザー・マクスウェルは優しく否定する。
ヒイロがコールドスリープしている間の長い年月を経て、彼は全てを消化してしまっている。
ヒイロがどんなに求めても、柔らかく包んで受け流してしまう。
「ヒイロ。本当に俺は、お前と一緒に居たかったんだ。」
けれどもそれは叶わなくなってしまったから。
「Jr.は、あの日までの記憶しか移植してないんだぜ。」
だから、あれがお前のデュオだよ。
ヒイロが、言い含めるようなデュオの言葉に反論しようとした瞬間、コンパートメントのロックが開き、老師張がそこに現れた。
「ヒイロ・ユイ。ファーザー・マクスウェルを困らせるな。」
男としての風格を身につけた彼は、まるで教師の様にヒイロを窘める。
時間と言う物が、彼らとヒイロを分かっている。
どれ程に足掻こうとも、抗えぬ物が横たわっていた。
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