萬小説

□熱帯魚は思考する。ACT1
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「あら、早かったわね。」
プリベンターの宙港で行き会ったサリィが手を振ってきた。
「そっちは今から出動か?お互い忙しいな。」
デュオは、肩に掛けた荷物をカートに載せながら応じた。
「まあね。貴方達が来てくれたから、私はこれでも楽になったんだけれど。」
「そりゃ光栄だ。」
微笑むサリィは血色の良い顔をしているから、満更お世辞でも無いらしいとデュオは受け止めた。
まあ尤も、最近はプリベンターにもきちんと国家予算がついて、組織としての体裁も整って来ているから、それが一番大きいのだろうが。
「でも、貴方達はこれからの方が大変かも知れないわね。」
「え?」
「詳しい話は近々レディから有ると思うわよ。」
私はもう行かなくちゃと、別れを告げるサリィを見送り、デュオは傍らで黙々と荷下ろしをしていたヒイロを振り返った。
「何の事だろ?」
「さあな。」
デュオがサリィと話して居る内に、ほとんどの作業を終えたヒイロは、我関せずと言ったそぶりで歩き出す。
置いていかれぬ様、その背中について行くデュオも、まあどうせ向こうから話が有るなら考えても仕方ないと割り切った。
この宙港も、つい最近プリベンターの専用施設として開設されたばかりだ。
二人が出港した先週よりも、今日は職員の数が増えた気がする。
今正に創成期の組織のなかで、自分達の仕事も多様に移り変わって行くのだろうと、デュオは思う。
「なあヒイロ〜。」
呼べば、彼の現在の相棒は軽く視線を向けてくる。
「お前、もし俺以外の人間と組む事になっても、死ぬなよ?」
「人の心配よりも、自分の心配をしろ。」
つれない返事はいつもの事で、デュオは肩を竦めて微笑んだ。
ヒイロは最近丸くなってきたから、きっと自分が側に居なくても大丈夫だろうと、少し寂しく感じながらも、それで良いのだとデュオは思う。
人数の増えて来たプリベンタ-の中で、ヒイロに憧れの視線を向ける人間の多い事を、デュオは知っている。
今まではウーフェイやサリィ等、既知の人間とばかりしか接触を持たなかったヒイロの交友関係も広がって、きっともっと人間らしくなって行くのだろう。
そんな未来をデュオは思い描いて居るのだ。
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