萬小説

□熱帯魚は思考する。Prologue
1ページ/1ページ


源初。
生命のスープ。
打ち寄せては引いて行くこの海に似せた液体の中で、彼らは眠ったり目覚めたりを繰り返していた。


暫くは普通にプリベンダーで、紛争鎮圧やテロ組織壊滅やらをしていたのだ。
普通に。
それは、五飛が居てサリーが居て、レディやノイン、たまにカトルやトロワやリリーナやヒルデが居て、デュオはそこそこに幸せに暮らしていたのだ。


今、目覚めたデュオは培養液を漂う自分の髪を見付けた。
閉じられたカプセルの中に縦横無尽に繁茂する海藻の様だ。
その隙間から、ふと視線をやれば、並んだカプセルの中に懐かしい姿が見えた。
おかしいなと、久しぶりにデュオは思考した。
彼が自分と同時に眠りにつく事は無いはずだった。
この眠りにつく前に、デュオは確かに彼に見送られたのだ。
また戦争か…。
声に出そうとしたが、それは液体に満たされたデュオの喉を震わせるのみで、音にはならなかった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ