萬小説

□天体ばらんす2
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黒いカンドゥーラの砂埃を払い、デュオは館の扉を開ける。
広大な白亜の屋敷の一角に有るこの館は、デュオがカトルから与えられた物だ。
本館と別館を合わせて、全部で14の館からなるこの屋敷どころか、周辺の町一帯がカトルの持ち物と言うのだから恐れ入る。
「お帰りなさいませ。」
ホールに入った気配に耳聡く現れた館付きの執事が、デュオの脱いだ外套を受け取る。
流石のウィナー家。
多分、デュオが敷地内に入ったところから、気付いて居たのだろう。
既に慣れたが、最初に此処を訪れた2年前は何もかもに面食らった。
「カトル様が2時間程前にお帰りになっておられます。デュオ様がお戻りになられましたらば、お知らせする様に承っております。」
執事の報告に、デュオは眉をよせる。
忠実な彼は、既にその仕事を終えて居るにちがいない。
「直ぐにお召し変えの準備をいたします。お部屋でお待ち下さい。」
恭しく頭を垂れる執事に従い、デュオは自室へと向かった。
此処でごねても仕方が無いのだ。
この館では凡そデュオの我が儘が通る。
館付きの使用人達は皆、デュオの言うことを聞いてくれる。
しかしそれは、デュオがカトルの大切な客人で在るからだ。
カトルがこの屋敷に帰って来れば、彼の言葉が一番重くなる。
デュオがいくら会いたく無いと言ったところで、カトルが来れば彼らは通す。
もちろん本当に、会いたくないわけではないのだが、会うなら明日で良いと、デュオは思っているのだ。
帰ってきたカトルがいの一番に自分な元へ来るのは止めて欲しい。
それが率直なところだ。


デュオが自室へ戻ると程なく、メイド達がやって来た。
手に手に装飾品を持っている。
そのフリルやレースやリボンや花飾りに鳥肌が立つ。
「失礼いたします。」
畏まった言葉と、彼女達の行動は全く別で、風に吹かれた髪を梳かれ、衣服は剥がされ、デュオは彼女らの成すがままに飾られる。
衣装が女物でないだけましな位に。
そんな華美な自分の姿は、それなりに様になって居るような気がするが、それにしてもカトルと会うためにこんな恰好になるのはおかしいと思うのだ。
けれども、それを訴えたところで、この館の住人達にはまるで解ってもらえなかった。
というのも、此処がカトルの妾達の住まう屋敷であるからだ。
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