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□よるべ
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シカマルが言う通り、サスケを止められなかった喪失感と無力感を得てからのサクラにとって、ナルトは酷く眩しい存在になったのだ。
何もかもお見通し、実際はそこまでは行かないのだろうが、全く彼の優れた所は、単なる知性の高さのみでなく、その人間観察力なのだとサクラは思う。
彼に惚れる女が正解。
その点自分はまるで不正解だ。
問題ばかり抱えた二人にばかり、気を取られている。
「ねえシカマル。…私、どうすれば良かったのかな?」
どうしたらサスケ君は思い留まってくれたのかな。
「子供の頃に解らなかった事も、大きくなれば解るのかと思っていたけど、まだ全然解らないの。」
「そりゃ多分、俺らはまだまだだって事だな。」
「あんたにも解らないの?」
「そんなに期待されたって、所詮俺はお前と同じガキで、しかも当事者でもないんだぜ。」
けれど。
シカマルは空を仰いだ。
西から雨雲が近づいているのが見えた。
「ナルトが止めて駄目だったんだ。他の誰の手にも負えなかったろうぜ。」
はっきりと言われずとも、サクラにも解っていた。
ただ。
自分にも出来る事が有ればと、願っているのだ。
「そうね…。」
苦笑するしか無かった。
シカマルも同じ様な、虚しい笑みを浮かべていた。
風に雨の匂いが混じってきて、胸が詰まる。
自分は泣きそうなのかと、サクラは思った。
未だもう少し、幼かったあの日々。
サスケはナルトばかり見ていた。
ナルトはサスケばかり見ていた。
二人は二人で完結していた。
あの頃はそんな二人が羨ましかったけれども、今になれば呑気な自分に嫌気がさす。
彼らは、抱えた孤独を慰めあえる相手が、お互いしか居なかったのだ。
憎しみや悲しみを二人きりで埋め合わせようとしていたのだ。
それでもサスケは、それを埋めきれずに里を出て行った。
多分と、サクラは思う。
眩しくなり過ぎたのだ。
あの頃ナルトは、急成長を始めたから。
光が強くなり過ぎて、サスケの闇は深まった。
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