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□よるべ
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どうにも表現しにくい感情だった。
単に頼りなかったとも言える。
大人は、危ぶむ様な、何かを期待するかの様な眼差しを向けていた。
仕方がないじゃないか。
一人ぼっちで、誰とも何の繋がりもなくて。
そんな所に、似たようなのがいたら、そこに“何か”を見出だしてしまって、何が悪い。

何が、悪かったのだろう。


「知ってたっつーか、気づいちゃいたぜ。」
シカマルは視線を合わせずに答える。
渡り廊下から、中庭を見下ろして。
「…そう。そっか。」
サクラもバツが悪くて俯いていた。
「まあ、チョウジ、イノ、キバは解って無かったろうけど、シノ辺りはあながち、気づいてたかもな。」
「ヒナタは?」
「うーん。ありゃどっちだろ?好きな相手が野郎と出来てても、変わらず想い続けるもんなの?女って。」「…あの子なら、或は。」へぇと、シカマルは天を仰いだ。
感心しているのか、呆れているのか、どちらとも取れそうな仕種だ。
「まあ、何と無く解るんだよな。あいつって、胸ん中に暗いもの抱えた人間に取っちゃたまんねぇ存在なんだろな。」
「シカマルにはその程度なんだ?」
「俺は普通だからな。平凡な忍の家系に平凡に生まれて、平凡に忍やってんだから。」
その才能の非凡さは、今の論点ではないと、サクラにも解っている。
「お前もさ、何の問題も無いガキの頃は何とも思わなかったろ。あいつの事。」「あんたって、なんか…ムカつくわ。」
お見通しな感じが。
「お前が振ってきた話題だろ?」
本当、女って面倒くせ。
「悪かったわね。」
確かに、わざわざ参謀部までシカマルを訪ねたのは、サクラだ。
「まあ、お前には解ってるんだろう?サクラ。俺とは違って感情で。」
シカマルが振り向いた気配に、サクラも彼を振り返り、その冷静な視線に出会いたく無かったと後悔した。
けれども確かに、そんな彼だからこそ、サクラは話し相手に選んだのだ。
彼の言う通りだ。
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