書庫

□繭
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好きだったさ。
サスケは、けして口にはしないが。
好きに決まっている。
今でも彼を好きだ。
何時だってそうだ。
常にそうだ。
彼だけが、サスケを全身で受け止め様とする。
何の策謀も無く。
小賢しい駆け引きなしに。
ただ真っ正面から向かい合ってくる。
それがとてつもなく鬱陶しくもあるのだけれど。
彼が好きだ。

それ以外に何が有ると言うのだろう。

子供の頃。
あの何も知らなかった当時は、ひたすらに彼を愛していた。
自分達を覆う暗幕の中で、縋る物はお互いしか無かったのだ。
彼と共にあれば、このまま満たされて行く。
そんな錯覚をしていた。
ナルトはそういう、いわば勘違いをしていた自分を忘れられずに、あの頃の幻影を追いかけているのだと、サスケは思う。
馬鹿だ。
とんだ勘違いだ。
サスケは、自らを塞ぐ覆いを取り払いたくて、真実自らの本分に気付いただけなのに。
自分を助けるつもりで追いかけて来るナルトは、とんだ道化者だったと思う。
しかし。
先日出会ったナルトは、腹をくくっていた。
相変わらず脳天気な口ばかり叩くが、それでも。
彼はやはり力強かった。
昔から変わらない。
太陽の様な存在だ。
サスケと同じ様に、重苦しい空気の中で足掻いていたはずの彼は、何時だってサスケより先にその雲を払ってしまう。
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