書庫

□繭
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曇天の厚く垂れ込めた空の様に。
常に何かに取り巻かれているかの様な、そんな息苦しさを感じていたあの頃の方が。
僕等は、きっと幸せだったのかも知れない。
固い殻の下にある、薄い膜を纏わり付けて、必死にそれを脱ぎ捨てようと足掻いたのに。
その先には、何もかも否定したくなる現実しか無かったのだから。


「うずまきナルトは面白い。」
マダラの弾んだ口調が気に障るが、サスケは生憎と睨み据えてやる事が出来なかった。
写輪眼の移植手術を受けた目は、未だ包帯に覆われているのだ。
「サスケは随分と彼に好かれているな。」
尤もマダラはサスケが睨んだところでどこ吹く風だ。
「…煩い。黙れ。」
声に出して不快を表明しても、まるで意に介さぬ姿が、サスケの脳裏にありありと思い出される。
自らの目的の為とは言え、マダラと行動を共にするのは些か煩わしい。
「障害は排除するだけだ。」
「その為の移植だしな。」
クツクツと笑うマダラの声が耳障りで、サスケは椅子に深くもたれ込んだ。
何を言っても無駄だと、彼への無関心を態現したのだ。

「実は好きだった?」
問われても、サスケは何も返さ無かった。
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