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□いつか見た。青い海。
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ナルトには二度目で、サスケにとっては三度目の波の国の入口は、この日も霧に霞んでいた。
「うわぁー。」
波の国へと繋がる大橋は、靄に絶ち消えて先がうかがえず、ただ大門のみが浮かび上がり、通行者にその規模の大きさを伺わせている。
「…へへっ。『なると大橋』だって。」
なんか俺って英雄ぽくない?
そう言って振り返ったナルトの頬には、既にかつての無邪気さが無かった。
それがサスケには辛くもあり、愛おしくもあった。
彼が削ぎ落としたその無邪気さは、全てサスケの為だから。
そんな風に口にしたら、方々から怒りの鉄拳が飛んできそうだったが。
「馬鹿言ってないでさっさと行くぞ。」
素っ気ない口ぶりの割に、表情が柔らかくなって仕舞うのは仕方が無い。
「ちぇ。サスケうらやましいんだろー?」
ナルトも口先だけの悪態を吐つくが、それはもう、穏やかな物にしかならなかった。
これで良いと思っていた。
良いような、気がしていた。
それで良いと思っていたのだ。


 「ここでさぁ、俺達白に会ったよなぁ。」
草むらの花が供え物。
小さな花を毟るナルトが呟いた。
サスケに聞くでもなく、独白みたいに。
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