書庫

□いつか見た。青い海。
1ページ/14ページ

 「俺、昨日ふっと思い出したんだってばよ。」
そんな切り出し方で始まった。
「何を?」
ナルトは窓の外を眺めながら、振り返りもせずに話している。
壁に背を預けて、忍具の手入れをする手も止めずに、サスケは応えた。
久しぶりに二人で過ごす時間だった。
ナルトが長めの休暇を取って、今朝がた突然サスケを尋ねて来たのだ。
今や鷹は、“うちはサスケ”を頼りにして集まった、行く宛ての無い忍達の一大組織となってしまっている。
ナルトは、リーダーであるサスケのもとへ辿り着くまでに、いくらかの末端構成員達をのして来たらしいが、まあそれは瑣末な事だった。
「一緒に波の国に行かねぇ?俺ってば、あれからまだ一度も白の墓参りしてねぇからさ。」
「…ふうん。」
「完成したタヅナのおっちゃんの橋も見たいし、イナリにも会いたいし。」
「…。」
「なー。駄目?」
余りにも反応の薄いサスケの表情を確認しようと、ナルトが振り返る。
少し、不安そうな眼差しだ。
そんな風に見つめられたら。
「いや…。付き合う。」
サスケは首を縦に振るしかないのだ。
俺は一度行ったからとは、ちょっと言い辛い状況だった。


 少年の頃は、遠くに感じた道程は、今や呆気ないほど短く感じられた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ