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□翼は要らない
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 優れた忍は、その能力の増す毎に、人らしさを失って行く。
その事にシカマルが気付いたのは、ナルトを間近に見ていたからだろう。
それは寧ろ遅かった感もあるが、それもまた、彼との距離が近すぎたせいだ。
尤、その事実に気付いたとしても、それはそうだと納得するだけだったのだが。
忍としての能力が増せば増す程に、それは人の枠を越えに超えてて行くのだから当たり前なのだ。
血継限界が忌まわれるのもそれ故と、頭では解っていた。
けれども、極身辺でその枠を超えて行くナルトの姿に、シカマルは肌の粟立つ実感を持って、それを理解したのだ。
単純に言葉としても仙境に達した彼。
その身の持つ存在感は、既に人間の物ではないのだ。彼と並んで立つのは、既に難しいのだろう。
シカマルは、冴えた頭でそう思う。
幼い頃から共に過ごした彼は今や、空気や光の様に透明過ぎて、強烈過ぎた。
けれども、それで良い。
彼はそれで良いのだ。
置いて行かれた淋しさや、歯痒さや苛立ちは、全て自らが身に負うものだから。

瓦礫の中から見上げたそこに、ナルトが一人で敵と対峙している。
敵が作った月に立ち、九尾を制した彼が。
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