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□美ヶ原
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したがって。
「そんなの、サスケが俺の大事な兄弟だからに決まってるってばよ!」
家族が失踪したなら連れ戻す。
返されたこの答えに、水月は笑い出しそうになってしまった。
いや、実際笑ってしまったのだ。
「何が可笑しいってばよ!」
心外と怒る彼を無視して、笑いは止まらない。
そうだそうだ。
水月は得心してしまったのだ。
実の兄を殺す事が目的のサスケ。
肉親の情をかけらも持たぬ自分。
兄弟の様に感じているサスケを連れ戻そうとするナルト。
情等に重きを置く水月ではないが、どれが人として一等マトモな行動なのか位は、知識として解る。
尤それは、忍としては是とされる物ではないのだ。
だからナルトはズレて見える。

けれども。
本当にオカシイのは自分達の方だと、思いだしたのだ。
そう思い返して改めてナルトを見遣れば、最初の印象とはかなり違って見えた。
全身に淡い色彩しか持たない彼は、何だか別の時限から生まれ落ちた、違う種の生き物みたいだ。
地べたをはい回る自分達を遥か高みから見下ろす、高位種の様に。
「ま…そんなはず無いけどね。」
一人ごちて水月は首斬り包丁を構えた。
挙動不審な水月を訝しんでいたナルトも、それを受けてクナイを構える。
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