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□美ヶ原
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 是非もなく。
すすきの揺れる様は水面の様に。
疇り鳴いて、渦を巻く。

「お前、ウザイよ。」

サスケを追い回して。
相手にもされないくせに。
水月のギザギザした歯は、視覚的にも攻撃的だ。
首斬り包丁に凭れる様に立った彼は、対峙しするナルトを高圧的に眺めている。
なんか、餓鬼臭い。
それが、水月がナルトに持っている印象だ。
への字に引き結んだ唇と、柔らかな線を結ぶ頬が合間って、非常に子供に見えた。
「テメーには関係無いってばよ!」
台詞すら。
髪と瞳の色彩の美しさには一目置けるが、言動が全てをぶち壊している。
「そう思ってんのはそっちだけだろ。俺はサスケの仲間で、お前の足止めを頼まれてんだからさ。」
軽くあしらえば、更に悔し気にナルトの口許が歪んだ。
「それでも!サスケは連れ戻す!」
ああ、頭が悪いんだな。
水月は少し彼を憐れに思った。
可哀相に。
自分がどんなにズレているかも解らないのだ。
サスケも大変な奴にイレ込まれたものだ。
「なんでお前はそんなに必死にサスケを追い回すんだ?」
尋ねてみたのは、頭のおかしな人間が、自分勝手にどんな理屈を捻り出すのかに、ちょっと興味が有ったから。
よほどトチ狂った回答が返って来るだろう。
水月はそう予測していた。
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