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□それは言の葉
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 眼差しが、痛いくらいに真剣で。
歪む事等無いと、信じていた。
否。
今でもそう、信じているのだ。


ナルトは、そんなサスケしか、知らないから。



 雁が渡る。
広く澄んだ空。
何一つ、隔たれる事も無く滑らかに。
そしてその彼方に。
この空の下の何処かに、彼が居る筈だ。
木の葉の森の、向こうに広がる、この世界の何処か。
そう気付いてしまう度、ナルトの胸は軋んだ。
身体の中で、何かが萎むような、締め付けられる様な。
こんな思いを、子供の頃から一体何度経験しただろう。
一人ぼっち。
それを感じる時に。
サスケを想う切なさは、寄る辺の無い日々と似ていた。
今と昔は違うのに。
ナルトの周りには仲間が沢山居て。
皆が皆、心通う大切な人々なのに。
それなのに。
サスケ一人失った事が、酷く苦しいのだ。


何故こんなにまで。
彼に固執してしまうのか。ナルトには解らない。

感情をストレートに表現する事は出来ても、分析する事は苦手だったから。


 そしてそんなナルトを見ている事が、サクラにはもどかしい。
彼女の立ち位置からは、ナルトの気持ちが手に取る様に解るから。
昔はそれに、反撥した。
それはそうだ。
恋敵だったのだから。
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