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□紅の彼ら
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簡素な口調でそう、言えてしまう程に。
その言葉は、ナルトの胸を軽く傷付ける。
サスケは、衣服を脱げばそこら中傷痕だらけだ。
それは、当たり前の事なのだ。
忍をしていれば、皆自然に怪我とはお友達だ。
だからこそ、傷の手当にも慣れている。
捲り上げられ曝された腕にも、新しい傷以外の傷痕が疎らに存在し、ああ嫌だとナルトは俯いた。
馬鹿は承知でため息をつく。
何が嫌だって。
お気に入りの大事な物に傷が付いたのだから。
そんな自己中心的な独占欲も、自己嫌悪に繋がった。
その点サスケは暢気な物だ。
サスケの傷をおもんばかって、早く寝ようと明かりを消そうとしたナルトの手を留め。
部屋の壁際に立つナルトを背中から抱きしめて。
石鹸の臭いと薬の臭いのする腕が、ナルトの鼻先に廻されていた。
「サスケ。早く寝た方が良いってばよ。」
顔をしかめたナルトの表情は、サスケには見えない。
「どうして?」
野宿の垢を落として、床の延べられたこの宵に、何故そそくさと寝付かねばならないのかと、サスケは気楽に問うた。
お前が怪我をしているからだと、怒り出したい衝動にナルトは駆られる。
けれども、その出鼻をクジク様に、サスケはナルトを引き倒した。
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