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□紅の彼ら
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 本当に、ヤマトの木遁忍術というのは便利だと思う。
忍びにしては余りに便の良すぎるその特性故に、木遁忍術の使い手は零に近しいのだと思える程に。
任務で疲弊した身体を引きずって帰る道すがらは、よくそんな下らぬ事に思考が及ぶ。
相棒が怪我等負っている時は、特に。
「サスケ。街が見えたってばよ。今夜は此処で宿を取ろう?」
振り返り様子を伺えば、彼は常と変わらぬ涼しい顔をしていた。
腕に負った傷は、彼にとっては大した事ではないのだ。
解っている。
それでも。
彼に野宿をさせるのが、ナルトには忍びなかった。
「ああ。」
素直に頷いた彼に安堵して、ナルトは視線を前方へ戻す。
山道から木立の向こうに、ささやかな街並が見渡せた。



 食事を取り、湯を浴びて、床の延べられた部屋に戻ったころには、夜も随分更けていた。
浴衣の片袖を捲り、片手で包帯を巻くのは大変だろうと見ていたら、サスケは存外鮮やかに、白い布切れを巻き付けた。
器用な男だとナルトは思う。
先程、俺がやってやると申し出たのをあっさり取下げた時には不満に思ったが。
成る程確かに、ナルトが手を出すより遥かに上手く、手際が良かった。
慣れているのだ。
こんな傷位たいしたことない。
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