書庫

□ほむらふぶき
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いよいよ5代目が引退するとの話に、木の葉の里は色めき立ってきた。
6代目火影を継承すると目されているのは、うずまきナルト。
もう何年も前から、彼は次期火影を継ぐために、里の上層部から鍛えられていた。
月の光を体言したかの様な金の髪に、清んだ湖を思わせる瞳。
彼は、今でこそ人の知る所となった、四代目火影と渦巻き一族の血を引く青年だった。



ナルトは下手な歌を口ずさむ。
木の葉の里を一望する、火影の執務室は、既にナルトに譲られていた。
賑わう里を見回して、彼はご機嫌だ。
彼の傍らには、黒髪の青年が佇んでいる。
長身で引き締まった身体つきをした彼だが、その顔立ちは両目を覆う帯に隠され、全容を伺う事は出来ない。
彼を知らぬ者ならば、盲目なのかと疑うところであるが、彼の身のこなしはそれを裏切っていた。
もっとも、忍であれば、視野を遮られようとも気配を読むものであろうが、彼はまたそれとも違った。
「ナルト。」
声をかけられ振り返った次期火影に、彼は書類の束を指し示した。
「いい加減仕事をしろ。」
内容はほぼチェック済みだからと、彼は言う。
「サクラちゃんやシカマルが上げてきた書類なら、俺が見なくても大丈夫だってばよ。」
それでも、里の長の承認を得て、初めて物事は動き出すのだと、何度言えばよいのかと、彼はため息をついた。
今此処に貯められた書類は、ナルトの火影就任をもって動き出す、いわば彼の初仕事なのだ。
ナルトは苦笑する。
甘えているのだ。
「ごめん。」
一言言い置いて、ナルトは素直に職務についた。
単純に、判をつくだけの仕事。
火影に憧れた少年の頃は、もっと華々しい仕事だと思っていたのだが、実際なってみれば、意外に雑用ばかり多い。
長とは即ち雑用係なのだと、学んだ。
しかも、暁との抗争を経て、世界は和平ムードに流れている。
平和の中の雑用とは、いかにも和やかな物ばかりだった。
緊張感など、持つ方が難しい。
そんなナルトを一丁前の火影にしようと、周りばかりがピリピリしている位だ。
周りのそんな気遣いもナルトは分かっていた。
だから、ナルトは少し、甘えてみている。
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