境界線2、3部

□境界線2−10
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「覚えてたんだな。あいつの事。」
後から事務室に入ってきたシカマルが、後ろ手に扉を閉じながら溜息をついた。
質問ではなく、確認といった響きだ。
「…うん。この頃はあまり思い出す事も無かっけど…。」
生きてたんだね。
囁く様にヒナタは応えた。
「悪かったな。俺は割と以前からあいつが生きてるのを知ってて、黙ってた。」
「良いんだよ。私、別に気にしてたわけじゃないの。仲良かったわけでもないし。」
それはそうだろうとシカマルは心中で思う。
あの頃のナルトには感情など一切無かったのだから、普通の人間が彼へ特別な思いを抱くなど土台無理な話なのだ。
ヒナタが普通で、サスケが異常なのだと、シカマルは勝手に結論付けた。
「けど、ああして突然元気な姿を見たから…ビックリしちゃった。」
俯きがちに喋るヒナタの頬に朱が刺しているのは、対人恐怖症気味の彼女の常態だと、シカマルは判断する。
「…ナルト君って名前だったんだね。私の事なんか忘れちゃったよね…きっと。」
「あいつは、アカデミーの事はまるで覚えて無いぜ。記憶喪失らしい。」
「…そ…そうなんだ。」
あの空襲の記憶等無い方がマシかとヒナタは思った。
けれども、微かな寂寥感が胸をつく。
「ま、後で、ゆっくり紹介するよ。ナルトも、サスケもな。」
「うん。じゃあ、報告を。」
その為にわざわざヒナタは山越えをしてきたのだ。
工作員としての顔を取り戻した彼女に、シカマルは無言で頷いた。
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