境界線2、3部

□境界線2-9
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例え人間の暮らし向きが変わろうと、フォラスを囲む山肌の稜線に変わりはない。
木々の中を抜けながら、ヒナタはその事実に切なさと安堵を覚える。
自然の雄大さからくらぶれば、自分達の足掻く姿が酷くちっぽけな、取るに足らなぬ事の様に思えもするし、激動の渦中に有る故郷の中の変わらぬカタチに、安らぎを得もするのだ。
彼女はフォラス国外での情報収拾を担っている。
隣国での潜伏生活だ。
偽りと知りつつも、そこにある平和な市民の生活は、時にヒナタの心を揺さ振った。
自分の仲間達には、他国への潜入すら行える能力が有るのだ。
ならば皆、平和な国に移り住み、自由に暮らしていけば良いと。
戦いを好まぬ彼女の心は、安易な方へ流されそうになる。
けれど。
彼女はこうして国に帰る度に思い知るのだ。
ああこの空は、私の細胞を形作った物なのだと。




「あ!ヒナタ!お帰り。」
彼女をまず出迎えたのは、サクラだった。
彼女は分析能力と医術に長けた人物であるから、本部に駐留している事が多い。サクラとシカマル、そしてカカシの手腕で、彼らの組織は表の商売で中々の利益を上げているのをヒナタは知っている。
「…ただいま。サクラちゃん。」
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