境界線2、3部

□境界線2-8
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無数の冷たい瞳が見下ろしていた。
それらは酷く脅えている様だった。
ただ一人、彼を穏やかに見つめる人がいた。
その他の多くは、彼自身よりも、そのただ一人を恐れている様だった。
「ナルト。」
その人間は、彼をそう呼んだ。
だから彼は、自分はナルトなのだと覚えたのだ。
それから。
彼等は赤ん坊を連れて来た。
日に数時間、赤ん坊は常にナルトの傍らにいた。
毎日毎日。
ナルトは赤ん坊の姿を見ていた。




「あの子は相変わらずか?」
広く重厚に誂えられた国王の執務室は、夕暮れの陽射しに朱く染められている。
窓に向かう老人は、先代国王の早世の為、国王の座を再び与る事となった先々代だ。
彼にとっては馴染みの深いその背中に、奈良シカクは頷いた。
「はい。相変わらず、ナルト様は、あらゆる変態を繰り返し、定まった形態に収まりません。」
老いた背が微妙に縮んだように見える。
「しかし。」
憐れと思った為に言葉を繋げたわけでは無いが、振り向いたこの老人を労りたい気持ちは確かにあった。
「ここ数日、日にほんの僅かな時間ですが、赤ん坊の形態を真似る事があります。」
「…そうか。」
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