境界線2、3部

□境界線2ー5
1ページ/4ページ

 重く歪む様な空だと、サスケは思った。
ほとんどの建物が崩れ落ちたあの戦争から、フォラスの空は倍以上に広がった。
それなのに。
見晴らしの良い夜空は、なぜか必要以上の比重を持って立ち込めている。
大いにそれは、サスケの心証に影響されているのだ。
ナルトが言った様に、ついて来たとしても何も出来やしない。
こうして星の数を数えてまつのが関の山だ。

 サスケの瞳は、通常の人間の百倍近い星を捉える。
普通の人間はそれだけ見えたとしても、それ一つ一つを認識する事を脳が拒否するだろうと、以前カカシが言った。
確かに。
幼い頃には、夜空は冷たい明かりに占められた、青白い天幕だった気がする。
此処までにその一つ一つを見分けられる様になったのは、アカデミーでの訓練の賜物だった。

 ナルトが入って行った店の裏道で、痩せた犬と痩せた男が残飯を漁っている。
無造作に巻かれた、汚れた包帯に包まれた右足は、既にその機能を失って仕舞った様だ。
こんな光景がそこかしこに有るから。
シカマル達はその存在意義を全うしようとするのだろう。その気持ちは理解出来る。しかし、彼等の様に真剣にはなれない。

 多分。
家族を失ったあの夜に、一度終わって仕舞ったから。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ