境界線2、3部

□境界線2-3
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 家族をサスケから奪ったあの事件は、後の戦の引き金であった。
後世の歴史は、そこを起点に戦を語る。
しかし、あの日がどんなに歴史に大きな意味を持とうとも、サスケにとってはただ、喪失の記憶でしかない。
たった一人生き残った彼に、国はアカデミーという居場所を与えた。
そこではトレーニングと実験だけで日々が過ぎていった。
それだけの、喜びも達成感もない現実が、サスケの頭上をただ流れて行く。
彼の家族の命を奪ったあの列車爆破事件が、現在フォラスを支配しているリニーが仕組んだ物だと教えられても、アカデミーの大人の言葉はサスケを通過して行くだった。
憎しみすらも湧き出て来なかった。
ただ、炎を噴き出す列車の窓だけが網膜に焼き付いて。
燃え尽きた家族と共に、サスケの魂も消えたのだ。
そう。
消えたと、サスケは思っていた。
彼女に出会うまでは。
思えばそれも、丸きり廃人のようなサスケに見切りを付けたアカデミーの研究員が、特異なサスケの遺伝子だけでも役立て様としただけであったのだが。
それはサスケにとっての僥倖だった。
「名前は7610。それしか無いの。」
長いプラチナの髪が、無機質な部屋の中で輝いていた。
名前の無い彼女に、サスケも本来の名を名乗らなかった。
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