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□いつか見た。青い海。
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あの日々が有ったからこそ、今こうして居られる。
そう受け止められる事こそが、二人の確かな成長の証なのだろう。
だから、流れ行く時は、無駄な物ではけしてないのだ。
そしてこの先きっと、それは絆になるだろうけれども。
今はまだ、そう言い切れる程の確信が、二人には無かった。
波間に揺れる小船の様がまるで、彼等を表すかの様に思えた。
例え自らの意思を持って立ち向かおうとも、世界は人を簡単に押し流す。
自分自身は同じ所に居るつもりでも、周りが変遷すれば、まるで意図せぬ場所に行き着いて仕舞う事すらあるのだから。
今こうして二人で並んでいることは、ただ幸運に恵まれただけなのかもしれない。
世の中は、思うより遥かに移ろい易く、願うより随分頑強で偏狭なのだ。
白とザブザがどんなに強く望んでも、夢見た通りには生きられなかった様に。
サスケ等は常日頃、阿保らしいと投げ出しそうになる。
簡単に放り出したくなる。
目に見えぬ物に立ち向かう程には、彼をつき動かす様な感情が足りなかった。
多分、ナルトやサクラの手を振り払ったあの時に、サスケは復讐心以外の心を捨てて来たから。
その目的も済んで仕舞った今、サスケは何も望む物が無くなってしまったのだ。
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