クラ×ロイ捏造ネタバレSS

※苦手な方はぶらうざばっく!
→ちょいシリアスです;


≪The Moon≫



***


冷たい風が微かに頬を掠めてくのを感じた…


軋む床板…


そっと開かれる扉の音…




もし自分が深い眠りにつく事の出来る身体であれば、きっとこの程度の違和感で目覚める事もないだろうとクラトスは思った。


天使の身である故か?

それとも長い逃亡生活で身についてしまった人本来の防衛機能なのだろうか?

それはクラトスにも分からない…

どちらにしてもいいものではないのだが、この時ばかりは僅かな違和感に目覚める身体に感謝した。


「さて…どうしたものか」


分かってはいるがもう一度その眼で確かめる。

やはり隣で寝ているはずの息子の姿は消えていた…








《the moon》



***



イセリア人間牧場…


全ての始まりであるその罪深き場所にロイドは独り佇んでいた。

何故こんな所へ来てしまったのかは自分でもよく分からない。

ただ夜中にふと目が覚めてしまい…

月明かりに導かれるまま気が付けば人間牧場まで来ていた。




「綺麗…だな…」


空を仰げば幾千の瞬き…

星の海…



どうして俺はこんな場所に来たんだろうとか、一体俺は何してるんだろうとか、そんな考えが一気に吹っ飛んだ。

周囲に空を阻む物がないこの場所は本当に見晴らしがいい。

何よりここから眺める月がこんなにも綺麗だったなんて…


「俺…知らなかったよ…」

自然と笑みが零れ、夢中で月を眺めた。

柔らかな光は森厳なこの大地を優しく優しく照らし出す。それはまるで夜風にすっかり冷え切ってしまった自分を温めてくれるような気さえ感じてしまう程に…


優しくて…


大きくて…


力強くて…





そう…


「クラトスそっくりなんだよなー…って、何言ってんだろ俺ッ///」

一瞬にして頬が熱くなる。

言った自分でもかなり恥ずかしいけど…ほんとに月に温めてもらったかも;


「…///」

でも本当に月はクラトスに似ていると思うんだ。闇を照らしてくれる優しい光りはクラトスそのものだと。

路頭に迷う自分を導いてくれたクラトス…

裏切られた時も実はずっと影で自分を支えてくれていた…


そして今も…









今までの旅の出来事だったり、父クラトスに対する熱い想いだったり、そんな事を考えながら何をすることもなく、ただ、ぼーっとしていた…が。


「…!!」

急激な視界の変化にハッとし、落としていた視線を空に戻した。

緞帳が下りた…そんな感じのあっという間の出来事だった。




月がない…



人間牧場を青白く照らし続けた月は夜風に流れる厚い雲に覆われ、ロイドが気付いた時には眼下の森は完全に闇に飲み込まれ、辺りは深い静寂に包まれた…




不安、恐怖、そして絶望。

そんな言葉が似つかわしい…

そしてそれは今まで必死に抑え込んでいた負の感情…

込み上げたものは一気にロイドの胸を突き破る。


悲しくて…


辛くて…


苦しい…




「…ク…ッ」

自分ではどうしようも出来ないこの気持ち…



「クラ…トス…」


その名を呼んだ…

クラトスは家にいるから来るはずもないのだけど。
でもその名を呼ばずにはいられなかった…



「クラトス…嫌だ…よ…」

自然と涙が零れる。

ロイドには分かっていた。この旅が終わる時、それはクラトスとの別れを意味するという事を…


そしてまた闇が訪れる…

今度は永遠に照らされる事のない闇が…

ロイドを永遠に支配するのだ…







そして今…

ロイドは月が見たかった。

闇に沈みそうになっている自分をクラトスに照らして欲しくて…










***




「月が見たいか?」





それは突然現れた…

ロイドが見たかったもの。



「クラトスっ!!?」

ロイドが会いたかった人。

聴きたかった声…



永遠に照らして欲しいと願った月…




「どうした?月が見たかったのだろう…」

「…」

クラトスの問い掛けにロイドはただ黙ったまま俯いていた。

「ロイド?」

そんな息子をクラトスは優しく抱きしめる。
夜風に冷たくなった小さな背中が少しだけ震えた…


「もう…泣くな…」

「…」

「ロイド…」

「ごめんクラトス…俺…」

「分かってる。何も言うな…」

「…」

これ以上クラトスに心配はかけられない。
クラトスの腕の中、ロイドは慌てて目を擦る。


「あ…ありがと、俺はもう大丈夫だからっ///」

「そうか、ならいい…」

やっと見せてくれた愛おしい我が子のいつもの笑顔にクラトスもつい顔が綻ぶ。
しかしクラトスは知っていた。

この笑顔は虚いやすい…

虚いやすいからこそ照らし続けてあげなければならないのだ…


「ロイド…」

それから落ち着きを取り戻したロイドにクラトスはそっと囁いた。













「私は永遠にお前の月で在り続ける」

…と。





END


***


放…いや間に合わなかった正月用SSをやっとこさ手直しました。
詰め込みすぎだし、微妙な話に微妙な終わり方でこれまたすいません;
不自然なので説明を加えるとクラトスは尾行していたんですね〜。きっと;
あとは皆様の妄想でカバーして頂ければ(謝)

ただ単にクラトスを想うロイド君とロイドを想うクラパパが書きたかっただけのクソ駄文でしたが最後まで読んで下さり本当にありがとうございます!
あ;月はこじつけです(笑)


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