Gift

□鈴なる星々
2ページ/14ページ

―彼は親友のために一冊の書を書いた。私は恋人のために一遍の愛を囁く―

「楸瑛!!!」

悲鳴に似た声が聞こえた。絳攸どうしてそんなに青白い顔をしているの?どうしてそんな泣き出しそうな顔をしているの?わからないことばかり。それでも私の意識は容赦なく暗闇へと沈んだ。

※ ※ ※

事の起こりは内乱だった。どっかの馬鹿が今の王に楯突いた。それだけのこと。それでも

「羽林軍の出陣を命じる」

主上の声が響いた。時は朝議。内容はいわずもがな白州周辺で起こっている内乱。どっかの馬鹿はそれなりの貴族で。そのために被害は瞬く間に広がっていった。今は白州周辺で収まっているがそれがいつ貴陽へ、首都へと押し寄せてくるかはもはや時間の問題だった。

主上は出来る限り交渉したがそれも無意味となる。最もそれは交渉とは言えるものではなかったけれど。なにせ相手の要求も主義主張も雲を掴むみたいに不明確なのだ。金持ちの道楽にしてはやりすぎているし…自殺志願者としか思えない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ