Gift

□それは、愛という名の絆
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ねえ、あなた。
私が、あなたやあの子を忘れてしまっても、私を隣にいさせてくれますか?
そう聞いたら、黎深様にぽかりと扇で頭を叩かれてしまった。

でも、そのとき黎深様が呟かれたのを、私は確かに聞きました。

嬉しかった。

あなたの妻になってよかったと、心から思ったの。



『それは、愛という名の絆』


貴陽紅本家別邸。
紅家当主正妻である百合姫は、室でちくちくと夫の衣を縫っていた。
百合姫の頭に挿した紅い花の簪がしゃらしゃらと鳴っている。
「できたわ。我ながらいい出来映えね」
縫い終えた衣を手に取って眺めていた百合姫は、不意に背筋にぞくりとしたものを感じて振り返った。
「な…っ!?」
思わず声を上げる。
「君が、百合姫か。紅黎深が妻にと定めた女…」
男がひとり、立っていたのだ。この、紅家当主の住まう邸に。
男のまとう空気に、身がすくむ。
だが、臆してはいけない。−−自分は、紅家当主正妻なのだから。
「何者ですか!ここがどこかわかっているのでしょうね!?」
誰何の声を浴びせると同時に、彼女の周りに紅家の精鋭″影゛が現れる。
「なるほど。いかにたおやかそうでも、紅家当主の正妻か」
男は愉悦そうに笑った。
百合姫はふと、男のまとう衣に目を留めた。
満月の紋。
気づき、驚愕の声を上げる。
「縹家当主…!?」
「ほう、知っていたか。私の薔薇姫を奪った邵可の義妹。それに忘れられたら、紅家の鬼子はどうするかな?」
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