捧色の間4

□君の役割
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・・・―――「楸瑛、俺に剣を教えてくれ」


絳攸が突然そう言ったことを、楸瑛は驚かなかった


困ったように苦笑して
「一昨日のこと、気にしてるの?」

と、間違いないとわかっていながらあえて訊いた


そう、一昨日、お忍びで劉輝・楸瑛・絳攸の3人は、城下町におりたのだが、その時に、金が目当てらしい馬鹿な連中に絡まれたのだ

劉輝は流石に紫色以外の衣に着替えていたが、楸瑛は藍衣を着ていたし、絳攸も含めて、3人共、雰囲気が、いかにも『貴族』だったので、絡まれて当然といえば当然だが・・・

とはいえ、宋太傅仕込みの剣技を持つ劉輝と、その劉輝を超える剣技を持つ、現将軍職にある楸瑛である


ちゃんとした手ほどきも受けていないような連中など、いくら数が居ようが勝てるはずなどなく、何事もなかったように片付けて、無事に城に戻ったのだが・・・


その時から、絳攸が沈んでいることに、楸瑛は気付いていた


自分1人、何も出来なかったことを、絳攸が気にしないはずはなかった


「ねぇ絳攸、君は文官なんだから、剣なんて出来なくていいんだよ」


楸瑛の言葉に、絳攸が納得するはずがなかった


絳攸の周りには、余りにも『文武両道』を地で行く人間が多すぎた

しかも全員、『優秀』どころか、『国内屈指』と言われるレベルでだ

そしてそれを1番、体現しているのが、実は楸瑛だ

静蘭も、国試を受ければ状元と言われてはいるが、実際に受けてはいない


だが楸瑛は、実際に国試で榜眼という結果を出し、武官になって数年で、将軍にまでなった


だから、楸瑛に
『君は文官なんだから』と言われても絳攸は少しも納得出来なかった―――
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