捧色の間4

□間違いの理由は・・
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・・・―――音もなく、突然その人が現れても、劉輝は驚かなかった


それが出来る人だと、知っていたから・・・

「用件はなんだ?縹 璃桜。謁見の申し込みもなく、そなたが余に会いに来るとは・・・」

劉輝の言葉に、璃桜は薄く微笑った

「―――・・・」

璃桜の発した言葉を、劉輝は理解出来なかった


璃桜は、劉輝を3歳くらいの男の子の姿に変えて、その目論見が成功したのを悟ると、また音もなく姿を消した―――



・・・―――「俺は迷ってない!」

「はいはい、わかってるよ絳攸」


いつもの会話をしながら楸瑛と絳攸が劉輝の執務室に入ると・・・

そこに居るのは、小さな小さな男の子

しかも明らかに大きすぎる、禁色である紫の衣を纏って・・・


「え・・・っと」


滅多なことでは動揺などしない楸瑛も流石にこれには動揺した

が、そこは流石に楸瑛である

すぐさま静蘭を呼びに走った


駆け付けた静蘭は、呆然としながらも、ハッキリと断言した

この子は劉輝だ、と・・

実兄であり誰よりも幼い劉輝を知っている静蘭が断言した以上、認めたくなくても認めるしかなかった


だが、もっと驚くのはこれからだった


幼い劉輝が、ぶかぶかの服を引きずって、絳攸の目の前までくると、

「ははうえ〜抱っこ」
と言ったのだ


これには流石に全員絶句し、いろいろ質問してみたところ、『劉輝』という自分の名前以外には何も憶えていないらしかった


「ね、ははうえ、抱っこして?」


そして何をどう勘違いしたのか、絳攸を自分の母だと思い込んだらしかった
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