捧色の間4
□間違いの理由は・・
1ページ/5ページ
・・・―――音もなく、突然その人が現れても、劉輝は驚かなかった
それが出来る人だと、知っていたから・・・
「用件はなんだ?縹 璃桜。謁見の申し込みもなく、そなたが余に会いに来るとは・・・」
劉輝の言葉に、璃桜は薄く微笑った
「―――・・・」
璃桜の発した言葉を、劉輝は理解出来なかった
璃桜は、劉輝を3歳くらいの男の子の姿に変えて、その目論見が成功したのを悟ると、また音もなく姿を消した―――
・・・―――「俺は迷ってない!」
「はいはい、わかってるよ絳攸」
いつもの会話をしながら楸瑛と絳攸が劉輝の執務室に入ると・・・
そこに居るのは、小さな小さな男の子
しかも明らかに大きすぎる、禁色である紫の衣を纏って・・・
「え・・・っと」
滅多なことでは動揺などしない楸瑛も流石にこれには動揺した
が、そこは流石に楸瑛である
すぐさま静蘭を呼びに走った
駆け付けた静蘭は、呆然としながらも、ハッキリと断言した
この子は劉輝だ、と・・
実兄であり誰よりも幼い劉輝を知っている静蘭が断言した以上、認めたくなくても認めるしかなかった
だが、もっと驚くのはこれからだった
幼い劉輝が、ぶかぶかの服を引きずって、絳攸の目の前までくると、
「ははうえ〜抱っこ」
と言ったのだ
これには流石に全員絶句し、いろいろ質問してみたところ、『劉輝』という自分の名前以外には何も憶えていないらしかった
「ね、ははうえ、抱っこして?」
そして何をどう勘違いしたのか、絳攸を自分の母だと思い込んだらしかった