捧色の間4

□望む場所は・・
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・・・―――5年間って、確かに短くはないけれど、決して、長くはないと思ってた―――



・・・―――藍家直系として、18年間生きてきた、その延長にあっただけの5年間・・


18年間ずっと、父の、兄達の、藍家当主の命令に、従うことに何の疑問すらも、抱いたことはなかったのに


いつか藍州に帰ること、『藍 楸瑛』という、自分の名前を、忘れたことはなかっただろうに、全ては藍家当主からの命令で貴陽に居たのだと、わかっていたはずなのに、



ねぇ、どうして?


何故今更、寂しいと、離れたくないと、

君の隣に居たいと、思ってしまうのかな?




本当はね、私、忘れていたんだよ


『藍 楸瑛』という自分の名前を、忘れたわけではなかったのに、忘れていたんだよ


公子の見極めが目的だなんて・・・



忘れていたんだ


馬鹿みたいに、子供みたいに、いつの間にか、思ってた


ずっと君の隣に、いられると・・・



だけど・・・



「さよならだね、絳攸」



『退官』『藍州』『帰還』

その、たった3語の命令に、楸瑛は逆らえないから


その文を見ながら、楸瑛は、此処には居ない大切な人に別れを告げた―――
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