捧色の間4

□甘えたい時には・・
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・・・―――「今日は休みなさい」

朝、食事の時に、黎深様と顔を合わせるなり、そう言われて、

「休めるわけありません。吏部が崩壊します」

と言い返したが、そんな言葉など聞かなかったかのように、黎深は絳攸を半ば強引に寝台へと戻らせた


・・・―――「お風邪を召されたようですね」

紅家専属の医師が、アッサリと診断を下す

「お熱がかなりありますので、少なくとも今日は、出来れば明日も安静になさってください」

そう言って、医師は退室した


「今日と明日、お前は休暇だ」

黎深は何でもないことのように言うけれど、絳攸にはそうはいかない

吏部は大袈裟でなく死活問題だし、それにいくら悠舜が宰相に就任したと言っても、側近としての執務もあるのだ


「でも黎深さ・・「絳攸」

絳攸の言葉を、黎深が遮る


スッ・・・と黎深の手が、絳攸の額に触れる

「熱が高いのだから、休みなさい」



反則だ、と思いながら、絳攸は大人しく布団に入ることにした


こんな時だけ、なんの嫌味も皮肉もなくそんなことを言われたら、逆らうことなんて出来るはずはない



「・・・ようやくわかったか。では私は行くからな」

と、黎深が出仕のために絳攸の室を出ようとする

「黎深様!」


黎深が、

「なんだ?」

と、絳攸の声に足を止めて振り返ったが、絳攸の方も、とっさに出た自分の言葉に戸惑う

どうして呼び止めてしまったのか・・・


「・・・あ、えっと・・・すみません。何でもありません。行ってらっしゃいませ」

と慌てて言ったが、黎深は絳攸の顔を見て、扇の裏でひとつ溜め息をついた


そして絳攸の寝台の傍に来ると、わざと皮肉気に言った

「そうだな。いい口実だ。今日はお前にずっと付いていてやろう。これで堂々と私も休める」


「え、れ、黎深様もお休みになるんですか!?」

「ああ、いい口実が出来て嬉しいよ絳攸。これなら兄上にも怒られない」


と黎深は笑った



本当は今日、久しぶりに府庫で邵可とお茶出来るようにお願いしようと思っていたなどとは、少しも感じさせない顔で―――
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