色彩の間
□耳飾りが導く答え
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・・・―――ヒョイッと黎深が絳攸を抱き上げた
やっとこの邸での生活に慣れたらしい養い子だが、我が侭の類は一切言わない子だった
それが、黎深は、つまらないと思っている
抱き上げられたことで、絳攸の顔のすぐ傍に黎深の顔がある
ふと、絳攸の目にとまったのは・・・
「綺麗・・・」
ほとんど無意識に、絳攸はそう呟いた
「ああ、これか・・・」
黎深がそう言った
絳攸が目にとめたのは、黎深の耳飾りだった
小さな紅玉のそれは、金具等の細工も考えれば、黎深の耳についている1対だけで、庶民なら5〜6年は何もしなくても遊んで暮らせるようなものだ
もちろん、小さな絳攸にはまだ、そんなことはわからないが・・・
不意に、黎深が笑みを浮かべた
「絳攸、お前も耳飾りをつけるか?」
「え・・・でも・・・」
「ひとつくらい、揃いのものがあってもいいだろう?」
黎深は、抱いている10に満たない子供を、試すように笑った
「黎深様と・・・お揃い?」
みるみる顔を明るくした絳攸に、黎深は苦笑まじりに笑った
「そうだな、じゃあお前にも耳飾りをやろう。ひと月ほどしたらな」
耳飾りが貰えるまでに、なぜか、ひと月の時間があった――