色彩の間
□耳飾りが導く答え
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・・・―――「絳攸の耳飾りを、ひと月で造れ」
そう命じられて、細工師は絶句した
「これを・・・ひと月でですか?」
紅家おかかえの細工師の技量は、国でも屈指の名匠で、いくら黎深の耳飾りが、実は傍目には判らぬ部分で複雑な形にカットされていようと、そしてそれと同じモノを造れと言われようと、半月もあれば充分だ
そう、黎深と同じように、紅玉をカットして、金具に多少の細工をするだけなら・・・
けれど、実は黎深が命じた絳攸の耳飾りは、たった1つだけ黎深と違うところがあった
「当主様、本当にいいのですか? “コレ”を・・・」
「他ならぬ私が、そうしろと言っているのだ。躊躇う必要などない」
黎深とたった1つだけ違うところ
その『違い』のために、黎深は、ひと月かけて耳飾りを造れといったのだ
細工師の了承を得ると、黎深は扇の裏で笑みを浮かべた―――