色彩の間
□李の花は変わることなく
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楸瑛は名門筆頭・藍家直系、主上や静蘭は至高の血を持ち、秀麗も紅家の長姫。藍家・紅家当主の正妻を除けば、彩雲国で一番高貴な血の女性だ。
では自分は?
黎深様に拾って頂いて、けれどやはり、少なくとも、アイツと共に『双花菖蒲』と並び称されるような者ではない
血が違うのだ
権力に興味はない
けれど彼等が、選ばれた存在なのは確かで、だから、自分が彼等の傍にいるのは間違いかもしれない
「絳攸」
絳攸を見つけて声をかけた楸瑛は、
「また迷ったのかい?」と、からかおうとして、やめた・・・
絳攸が楸瑛を見ていなかったから
いや、視線は楸瑛を捕えていたが・・・
楸瑛を越えて、楸瑛の後ろにある何かを見ていた
楸瑛は、表情には出さなかったが、内心とても動揺した
他人が、楸瑛を見ながら、実は楸瑛の後ろにある何かを、家柄・権力・血筋という、『藍家』を見ていることは、別段珍しいことではない
むしろ殆どの者がそうで、あの黄尚書でさえ、楸瑛の後ろに『藍家』を見る
ただ彼は、楸瑛を通して藍家の動向を見ているだけで、藍家に媚る気など全く無いが――
楸瑛をそんなふうに見ないのは、黎深と絳攸だけだ
最も、黎深は“国勢にも藍家にも興味がないから”楸瑛が藍家の者でも興味がない・・・というのが理由だ
けれど絳攸は違う