色彩の間
□私を『生んだ』君に
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「また迷ったのかい?本当に君、天才だよね〜、いろんな意味で」
「うるさい!!黙れ楸瑛!」
そう、君は初めて逢った時からずっと“私に”感情をぶつけてくれる
“藍家当主の弟”でも、“藍家直系”ですらなく、『藍 楸瑛』に対して感情をぶつけてくれる
「あはは。藍家直系の私にそんなふうに怒鳴るのは君だけだよ絳攸」
私は君の前でだけ、わざと『藍家直系』と口にする
わざと藍家の名を出して確かめる
「馬鹿か。家名に媚へつらって欲しいなら、他の奴を当てにしろ。俺は“お前に”怒っているんだ。藍家なんか関係ない」
そう、その言葉を聞きたくて
「藍家なんか関係ない」
「お前に怒っているんだ」
他の人間が聞いたら、私を侮していると、絳攸を責めたてるだろう
絳攸が、彼自身さえ気付かずに、私を救ってくれているとは思わずに――
ありがとう
君はちゃんと“私を”見てくれた初めての人
仕方のないことだけれど、兄弟たちは、私を“弟”か“兄”として見る
けれど“弟”も“兄”も私だけではなくて・・・
愛されていないと思ってる訳じゃない
でも、『藍 楸瑛』という個人に対する認識よりも、“弟の一人”・“兄の一人”という認識のほうが強い
けれど絳攸は、ちゃんと“私を”見てくれた
『龍蓮』の名を持つ弟に会ってさえ
―――彼ほど有能な人物が、『龍蓮』の“意味”を知らないわけはないのに―――
私と龍蓮を比べることもない
君は初めて『藍 楸瑛』に“意味”を与えてくれた人
私はただ、『藍 楸瑛』のまま、此処に在っていいのだと―――
だからね絳攸
君に逢ったあの時に、初めて私は“生まれた”んだよ―――
END