その他著権駄文部屋1

□“兄弟(兵器)”の望んだ“今(生き方)”
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「ローグが勝てば…難波重工が世界を牛耳るのか!!」
「…」

東都と西都の運命の最終戦を目前に弟は興奮を隠せないでいる
そう
勝利は目前
簡単に勝っては面白くないと
命を懸けた駆け引きを折りまぜながらも
“主”を楽しませるのも“子”の義務だ
弟はグリスの揺さぶりには失敗ったが
結果的には“主”を楽しませることが出来たのだから良いだろう
万丈は面白いぐらい引っ掛かった
情報どおりだ
愚直の馬鹿で
戦闘力の向上だけは情報外で焦ったが
最終的には
うまくいった

『信じたのは俺だ』

なのに
どうして引っ掛かる
騙され
怒る事なく
真っすぐに

「兄貴?」

どうした?
弟の問い掛けに
ハッ

我に返る

「最終戦は目前だぞ?見ないのか?」
「あぁ…」

難波重工の
“主”の夢が叶うのを願い叶える為に動くのが
“子”の役目

「雷…お前は…“今”の自分に…疑問を感じたことはあるか?」
「あ?」

なのに
何故か
今更ながらに
たった
あの一言で
“今”が揺らいだ
全ては
十年前のあの日から
全てが
“壁”で閉ざされ
人の心さえも
親子の情愛さえも寸断されて
捨てられ
縋る事も出来ず
幼い兄弟が生きていく事が絶望的な状況で
自分達さえ知らない
その才覚を
“利用”する名目で
見初められたとしても
伸ばされた手を
掴み
生きていくことを望んだのは“自分”達だ
だから
それ“以外”など
ありはしないし
望んではいけない

「…すまん。気にするな…」

ヘルブロスは…
中々疲弊するみたいだな…
くだらない発言を撤回するように
頭を一度振り
溜め息を吐く

「会長…の下へ行くぞ」
「…」

歩みだそうとして
兄貴

弟の言葉に
それが止まる

「?」
「しょうがねぇよ…」
「…」
「そんなもん思ってもよぉ…」

俺たちは
“兵器”だぜ?
“人”じゃねぇよ?
…。
弟の言葉に
そうか

言葉を濁す
そうだな
“俺達”は“兵器”だな
“主”の望むままに戦い
負ければ処分される
“人間”の様に考えるなど間違っている…な…
それが
悲しいのか
淋しいのか
苦しいのか
わからない
わからなくなってくる
だから
余計に
万丈のたった一言が
其処に込められた
言葉が深く突き刺さる

「でも…まぁ…あの時…あのままか…?」
「?」
「“今”じゃなければ…俺は兄貴とは一緒じゃなかったんだって事はわかるぜ」

ガキでも
親戚だった大人は俺達を疎んでた事ぐらい
わかったからなぁ…
しみじみと言葉をこぼす弟に
目が点になる
弟も
気付いていたのか
“あの時”の事を…

「まぁ…なんだ。兄貴と肩を並べて…“同等”として“兵器”として生きて何時か終わるなら…“今”は悪くねぇよ?」

俺は。
兄貴は?
どうなんだ?

問い掛けに
驚き
だが
自然と口元が緩む
そうだ
伸ばされた手を掴んだのも
選んだのも
生きてきたのも
“自分”達
それ以外の“未来”など
いらない
望まない

「なら…俺の足はひっぱるなよ?」
「はぁ?!兄貴がふってきたはなしだろうよ!!」

うおい?!
はっ。
だから
“望んだ”…
“望みたかった”未来は…


※難波重工チルドレンの鷲尾兄弟。
兵器として兄弟で生きるか
人として“一人”で生きるか
万丈の言葉に揺れ動いた兄弟たちの声
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