その他著権駄文部屋1

□獅子王の願い、獅子王の企み
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「…」

やはり
私の“勘”は当たっていたようだ…
敵に囲まれ
一人
溜息を吐く
つまらない
ではなく
不安が的中してしまった事への
安堵
いや
安心
いやいや
おかしいな
参謀だったクエルボに比べて力任せの
私は
頭が決して良くない筈なのだが
リーダーと
“王”と認めた
あの男は
それは本能的な“勘”だと
本能的なモノも俺様には必要だ!
などといってのけたのが懐かしい
そんな男は今は深い眠りについている
最後の最後まで傷つき限界までに命を燃やし
戦い
勝利し
本来ならば
労われ
勝利を讃えられなければならない存在だが
やはり
無理だったようだ
まだ
戦いは続く
倒した瞬間は
共に見た
網膜に焼き付く程に
そして
その瞬間に
本能的に感じてしまった
まだ
終わりではない
寧ろ
我々だけでは倒せないと
何をどうしたらいいのか振り絞った
命を落とした仲間達の思いを無駄にしない為にも
奴を必ず葬らねばと
王を眠らせ
情報を集め
宇宙を彷徨い
そして…

「やはり…私の“勘”は当たっていたようだ…」

故郷が
何者かに襲撃されたらしい
遠い辺境の惑星でそれを耳にし
確信してしまった
“王”に仕えると決めた瞬間から
幼い我が子を預けた
何時命を落とすか分からない
そんな戦いに赴くのだ
我が子に火の粉がかからない訳がないと危惧し
身分を偽り
親子という概念を捨て
離れた
もしもの際には養い親と共に逃げられるように
真実が伝わるように“船”を残して…
されど
希望にも満たない光を残しても
その悲報は
胸を抉る
救世主の姿を取り
静かに
荒く
敵を
一つ一つ
破壊する
咆哮があがる
可能性の現実に
未熟な力に
自らの弱さに
言い様のない怒りと現実に
喉がはち切れんばかりに叫ぶ
だが
その咆哮が消される程の爆音と閃光
思わず腕で覆い身を隠す
それらが全て止んだ時
本能的な
忌むべき“モノ”が
沸き上がる
距離は
近い
警戒は解かずに
爆音のした方向へ迎う
其処には
何かに襲撃された宇宙船
その中からは傷つきながらも
這い出るように姿を見せる乗組員
だが
ダメージが大きいようだ
次々と倒れ
意識を失ったのか動かなくなった
ジャークマターの襲撃を受けたのか…
何かを探ろうとしていたのか
ふと
倒れた乗組員の一人に目が行き
まさか

走り傍に赴く
その傍に膝を着き
口元に手を当てる

「…息はあるな…」

安堵よりも疑問
驚愕よりも昂揚感
その一人は
眠りについている筈の“王”だった
未だに目覚める事は出来ない程に疲弊している
あの男が此処に居る訳がない
なら
似てるだけの人物か?
と言えば
本能は否定している
ならば
私がしようとしている事が叶おうとしている
辺りを見渡す
まわりで気を失っているであろう他の乗組員も
星の力を感じる
…どれ程の月日が
いや
年月が経ったのか
どれ程の
命が
奪われ
潰えたのか
私がしようとしていた事に…
いや
今は反省や後悔はしないでおこう
しても無意味だ
一刻も早く手当てをしなければ
襲撃がジャークマターなら
彼らは命を狙われる
そうなれば
私がしようとしていることが叶わなくなる
それだけは

「みん…な?」

この力は
ある星の力を感じ
その方向を振り向く
其処には
細身の長身の一人の青年が立っていた
一目で理解した
それが確信したのは青年の耳に付いている石だった
きらり
僅かに反射した
光に光る紅い石のピアス
亡き妻の身につけていたお気に入りの石
別れの際に再び巡り合う事が出来た時の目印として渡したモノ

「そうか…無事に出会えて居たのだな…」

青年は狼狽しながらも仲間の名を呼び
そして
漸く気付いたのか

「あんた…」

誰だ?
此方を向いた
成長した息子に出会えたのは嬉しいと感じた
同時に
悲しいと
すまないと
しようとしている事は
実は
仲間の復讐
徹底的な報復
奴の完全な排除
その為には
仲間を
これからの命を
時間さえも
利用しなければ
出来ないことだから
そんな私の身勝手な事柄に巻き込んで
しかし
嬉しいと思うのは
諦めてしまった息子が生きて成長してくれて
その姿を見せてくれたことその間には
様々な苦労があっただろうが
そして
そんな息子と王が共に並び居る姿を見ることが出来たのだから
だが
まだだ
まだ
最後の仕上げが残っている
本当に
私のしようとしている事が叶うのか
いや
叶える為に

「私は…」

未来の“救世主”に託すために

「オライオン…八十八の救世主の一人だ」
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